ポジティブでアグレッシブな危機管理とは

2月1日に開催された「道北ビジネスプランコンテスト」の最終プレゼンテーションから、早10日。

最終プレゼンテーション以降、新規案件のお声掛けをいただいたり、取引先の方から「最優秀賞おめでとう」と有難いお言葉を頂戴したりと、反響の大きさに大変驚いています。

このような機会をくださいました旭川創業産業プラザ様はじめ、道北ビジネスプランコンテストに関わられたすべての方々にあらためまして深く御礼申し上げます。

さて、今回のファイナリスト5組中4組がインバウンド関連のビジネスプランで、近年の国際化の流れを反映したコンテストとなりました。

そのインバウンドマーケットですが、現在、新型肺炎によるツアーのキャンセルが相次ぎ、今年の札幌雪まつりは過去最高を記録した昨年より71万人もの来場者減少で閉幕しました。北海道のみならず日本中の観光業界に大きな影響がでており、自治体によっては助成金なども検討が始まっています。

観光業界は今回のような外的要因により、予期せぬ危機に対峙しなくてはならないことが多々あります。このような危機を乗り切るのに必要なのは「体力」です。

現在の北海道を例に挙げますと、夏に稼いで冬はその貯金を使い果たし最終的に収支はトントンというビジネスモデルが多く見受けられますが、これでは「体力」をつけることは難しく、震災や今回のように感染症のパンデミック等で観光が著しく落ち込んだ際に持ちこたえるのが困難となります。

私はこれまでに、ニューヨークで同時多発テロ、東京で東日本大震災、北海道では胆振東部地震と、各地で外的要因による観光業界の危機を経験してきましたが、共通して言えることはどの外的要因も観光業界の致命傷にはならなかったという事実です。もちろん、それらの要因により閉店せざるを得ない事業も見てまいりました。しかし観光というビジネスには、みなさんが思っているよりも大きなエネルギーがあり、どの地域も必ず復興を果たしています。

これらのことから、外的要因によりマーケットが冷え込んでも、再び活気を取り戻すまでの間、持ちこたえられるだけの「体力」を温存することができていれば、危機を乗り越えられる可能性が高くなると言えるでしょう。

これまで閑散期として諦めていた時期に新規マーケットを開拓し、年間収支をトントンから黒字にシフトさせ、いつ訪れるか予測のつかない危機に備えることができるかどうかが課題になります。

自治体や政府は事が起こってから助成金を投入するだけではなく、事が起こる前に危機に耐え得ることのできる「体力」を確保するべく、新しいマーケットの開拓に費用や知識を投じるプランも選択肢に入れる必要があるのではないでしょうか。

リクール北海道は閑散期に呼び込める新しい販路の一つとしてインバウンドマーケットをご提案しており、その第一ステップとして東京オリンピックに焦点を合わせ、英語環境の整備に取り組んでおります。

観光業界の現状は厳しいものですが、この状況だからこそよりポジティブでアグレッシブな危機管理に関心をお持ちいただける自治体や施設が増えることを期待しております。

リクール北海道
諸橋 篤

「2019年インバウンド人気上昇都道府県ランキング」に見る正攻法の強み

 

楽天トラベルがインバウンド観光客からの支持を急激に伸ばしている都道府県を発表しました。

集計方法はとてもシンプルで、2019年1月1日~12月31日までの楽天トラベル外国語サイト経由の予約人泊数をもとに、対前年比でどのくらい数字を伸ばしたのかを比較したランキングです。

ちなにみ「人泊数」とは「人数x泊数」という意味で、「2人で3泊」なら「2人x3泊」で人泊数は「6」となります。

まず、最初に順位からお伝えいたします。

1位 新潟県 +85.2%

2位 岐阜県 +72.2%

3位 山形県 +64.7%

4位 福島県 +56.2%

5位 群馬県 +52.1%

「思った通りの順位だね」という方は少数派のはずです。私がぱっと思い出せる訪日外国人に人気と思われる都道府県は、一つもランクインされていませんでした。

ランキングは5位までしか発表されていないため北海道が何位だったのかはわかりませんが、京都や東京なども含め、もともと人気の高い都道府県は実際の人泊数では高順位になるものの、伸び率での健闘は難しいのでしょう。

さて、対前年比85%増の新潟県ですが、楽天トラベルの分析を見てみると「冬のスキー需要が好調な「越後湯沢・苗場」エリアが+105.7%(約2.1倍)、「上越・糸魚川・妙高」エリアが+95.8%(約2.0倍)と大きく伸長しました」とのこと。

その他の地域もスキー(雪)・温泉・文化(白川郷など)を軸に外国人観光客の人気を伸ばしているようです。

文化的な側面が弱くはありますが、北海道にも上質な雪とすばらしい温泉がたくさんあります。

旭川市に関しては、一般社団法人 大雪カムイミンタラ DMOが「マウンテンシティリゾート」というコンセプトで旭川市街地を中心に1市7町に点在する個性的なスキー場を「テーマパーク」のように打ち出しています。

マウンテンシティリゾートには旭岳のスキーコースを含め、プロレベルのツワモノたちから初心者までが楽しめるバラエティに富んだコースが8か所、もちろんスキー場の近く(またはスキー場に隣接して)温泉も付いています。

道北地区のパウダースノーは世界的にも有名で、世界中からその雪質を求めて多くのスキーヤーが訪れます。

しかしながら、北海道がターゲットにするべきは果たして「雪質にうるさい上級スキーヤー」だけでしょうか?

実はわたくし東京生まれでスキーは一度もしたことがありません。理由はいくつかありますが、一番を挙げるとしたら「準備が面倒」だからです。

ですが「普段まったくスキーをする機会はないけどせっかく北海道に来たのだからちょっとくらい体験はしてみたい」という気持ちは常に持っています。

この「準備は面倒だけどちょっとだけ体験したいマーケット」、これが意外と無視できないのではないかと考えています。

例えば数年前から流行り始めたグランピング。

「キャンプはやってみたいけど、準備が面倒マーケット」をうまく取り込んだ好例です。豪華なテントは既に設置済で、バーベキューの食材や火起こしまでセットになっています。車で乗り付けてキャンプを楽しみ、後片付けも不要という上げ膳据え膳なシステム。当然費用は通常のキャンプよりは高額となり、本格的なキャンパーからは邪道とも言われています。

グランピングを利用する人たちは必ずしもキャンプ好きの人たちばかりではありません。でありながら、この疑似(?)キャンプ体験から本格的にキャンプにハマる人たちがいるのもまた事実。

スキーやウエアをレンタルで一式揃え、さらにレッスンも受けたいとなればグランピングのように費用は当然割高になるでしょう。しかし雪の少ない地域から訪れた人たちにとって最高の雪質を誇る北海道でスキーを体験できるのであれば、高いとは感じないはずです。なぜなら、その10倍の金額を払っても普段は絶対に体験できない特別なアトラクションなのですから。

スキー未経験者でも思い立った時に気軽に体験ができる仕組みを作ることができれば、スキー人口の増加につながり、マーケットの裾野が大きく広がるはずです。インバウンドマーケットだけではなく、日本人観光客でも私のように「スキーは未経験だけれど、一度はゲレンデに立ってみたい」と思っている人が少なからずいるでしょう。

“ビギナーにやさしい、世界一お手軽にスキーを満喫できるシティリゾート”

我ながらお粗末なコピーではありますが、国内外問わず「ちょっとだけスキーを体験したいマーケット」には刺さるかもしれません。

先日遠軽町にオープンした道内125か所目の道の駅「遠軽 森のオホーツク」はスキー場に隣接していて「手ぶらでもスキーが楽しめる」とのこと。価格はスキー・ウエア・リスト券・食事がセットになった一番高額の「レンタルフルパック」でもたったの10800円です。近くに温泉もありインバウンドの「ちょっとだけスキーを体験したいマーケット」にはピッタリなのですが、ホームページが日本語のみなのが残念。ぜひ、リクール北海道にお手伝いをさせていただきたい。

話が少し逸れましたが…。

「スキー未経験者に世界一やさしい」を道北の文化にまで昇華させることができれば奇抜なアイデアなどはなくとも、雪・温泉・文化の正攻法3点セットで、世界のステージでも十分に勝負できると、私は自信を持って言えます。

リクール北海道 諸橋 篤

 

 

 

ライナープラン終了しました。

 

昨年12月6日のライナー掲載以降ご好評いただいてまいりましたストーリーメニューのライナープランは、1月15日をもちまして終了とさせていただきました。
ご利用ありがとうございました。

尚、ストーリーメニューは弊社事業のひとつとして今後も続けてまいります。

海外からのお客さまの「何を頼んだらよいか分からない」「買うのがちょっとこわい」を「これなら食べてみたい」「家族へのお土産にしよう」に変えるストーリーメニューは、簡単な英語表記のみのメニューやタグによる外国人観光客対応に比べ劇的に購買意欲を促進するものと確信しています。

今年も多くの訪日外国人が北海道を訪れます。夏にはいよいよ東京オリンピックです。英会話がなくても海外からのお客さまをお迎えできる心強いツール、ストーリーメニューでストレスフリーなおもてなしを実現しましょう。

お問合せはお気軽にリクール北海道 CONTACTページ よりお寄せください。

 

大人がワクワクできるクリスマスのススメ

比布町の村中一徳町長が「良佳プラザ・遊湯ぴっぷ」に飾られたクリスマスツリーをツイッターで紹介しておいででした。

ツイッター内で「子供のころのワクワク感は完全に失われておりますが…」という町長のコメントを拝見した時に感じた、日本と海外のクリスマスの在り方の違いについてお話ししたいと思います。

クリスマスというと海外では一年で最も盛り上がるイベントであり、町のいたるところに施された華やかな飾り付けに子供大人関係なくテンションは上がり、興奮を抑えることはできません。

ホワイトクリスマスとなるとさらに特別感が増します。白い雪と華やかなオーナメントの組み合わせは最強ですから。

しかし、なぜクリスマスを盛り上げる条件がこれだけ揃っている北海道なのに、子供たちしかワクワク感を得られないのでしょうか。

大人になって子供の心を忘れてしまったからだと言う人もいるでしょう。それも一つの要因かもしれませんが、必ずしもそれだけではないと思えてなりません。

いつの時代も大人が目を輝かせワクワクしながら本気で取り組んでいることに子供たちは憧れます。

少し話が逸れますが、例えば地域のお祭りを例にしてみましょう。

町内のお兄さんやお姉さん、おじさんやおばさん、そして長老たち大勢の大人が長い時間をかけて目を輝かせながら本気で準備をした勇壮なお祭りは、見ている子供たちを「自分もいつかあの舞台で太鼓をたたきたい!」「見るだけではなく、お祭りに参加したい!」という気持ちにさせます。この時子供たちが抱くワクワク感は本物です。もちろん大人たちは子供たちの何倍もワクワクしながら、お祭りを楽しんでいるに違いありません。

一方、日本のクリスマスはというと、残念ながらまだまだ大人の本気が伝わってきません。イオンなどの大型商業施設の館内では頑張っているところもありますが、「町の雰囲気づくり」にまでは貢献できていないというのが正直な印象です。やはりクリスマスは町全体で(少なくとも町のメインストリートは)盛り上げていただきたい。このままでは大人だけでなく子供たちも「クリスマスだからって別にワクワクしない」などと言い出しかねません。

そうなったらあまりにも寂しいですし、何より北海道の雪がもったいない。

私見を述べさせていただくと、各市町村は地域をあげて「息をのむような」クリスマスデコレーションを施すべきと考えます。誤解のないように申し上げておきますが、多くのお金をかけて地域全体を豪華にクリスマス色に染めましょうというお話ではありません。1本の素敵なクリスマスツリーだけでも素敵な空間を演出することは可能です。

ポイントは3点。

まずは町のシンボルとなるクリスマスツリーを立てる。できれば毎年本物のモミの木を運んできてほしいですね。周囲にモミの木の香りが漂っていれば言うことなしです。点灯式などのイベントでクリスマスの到来をアピールして、市民のクリスマススイッチをオンにして差し上げるとよろしいでしょう。

次に、イルミネーション(電飾)の色。最近は白と青のLEDが主流となっており、それはそれで素敵なのですが、やはりクリスマスと言えば赤と緑の電飾は欠かせません。赤や緑に加えオレンジなどのカラフルでオーソドックスな電飾が真っ白な雪を彩り、極寒の中に温かみのある華やかなクリスマスムードを演出してくれます。

最後は、毎年少しずつグレードアップしていくこと。いきなり完成形を求めるのではなく、無理せず毎年少しずつ工夫を取り入れながら町が一体となって、海外の飾りつけなどを参考にしながら時間をかけて魅力的なストリートを作り上げてください。

街路樹や街灯の飾りつけは自治体が担当し、町のメインストリートにお店を出されている方々は、華やかなデコレーションを店舗同士で競い合い、地域がOne Teamとなって訪れた人たちを驚かせてみてはいかでしょう。

北海道には「クリスマス映え」するであろう素敵なストリートがたくさんあります。

旭川の買物公園、美瑛や増毛町、それに個人的に前々から気になっている下川町のメインストリートなど数え上げたらキリがありません。ところが、それらのストリートからはクリスマスに対する熱い思いのようなものが残念ながら伝わってまいりません。

大人たちが目を輝かせてワクワクしながら、他町に負けじと本気で取り組んだクリスマスデコレーションは、いつしかきっと地域のプライドとなり、子供たちだけではなく大人の心もワクワクさせるパワーが必ず宿ります。

「クリスマスだからあの町に行こう」と思わせ、訪れる人の期待を裏切らず、何度でも足を運びたくなる自慢のクリスマスストリート。

どうでしょう、今から始めてみませんか。

そしてそう遠くない未来、道内・国内のみならず海外からのお客さままでもが「今年もクリスマスは北海道で過ごそう」と毎年12月の北海道旅行を計画するようになったなら、こんなに素晴らしいことはありません。

 

リクール北海道
代表 諸橋 篤

 

 

「高級ホテル50カ所政策」の道標

先日、日本政府が「各地に世界レベルのホテルを50カ所程度、新設することをめざす」と発表したことを受け、観光経済新聞に日本旅館協会副会長の永山久徳氏のコラムが掲載されました。

内容は非常に興味深く、今後の地方観光を考えていく上で大変勉強になりました。

これまで国はかんぽの宿やグリーンピア、国民休暇村など税金を投入して贅沢な宿を格安で提供してきたことにより既存の宿泊施設が疲弊し、その多くが廃業に追い込まれたという歴史を振り返り、政府は過去の失敗を繰り返さないよう「世界レベルの高級ホテルを50ヶ所程度新設する」という政策を見直すべきという内容でした。

しかしながら、ビジネスホテル、ツーリストホテル、旅館、民泊しか存在しない地方都市に世界レベルの高級ホテルがオープンすると地域の宿泊施設は疲弊し、前回同様次々と閉館に追い込まれてしまうのでしょうか。

私は、少し違う見解を持っています。

世界レベルの高級ホテルの建設により地域に多様性が生まれ、むしろ大きなメリットに変化する可能性が高いと考えています。

以前、東京のホテル業界で「2007年問題」というものがありました。一般的には「団塊世代の技術者の多くがその技を継承できずに2007年に定年退職を迎えることにより発生する問題」という認識が強いですが、東京都内のホテル業界に関しては、2005年頃から「2007年までに外資系を含む高級ホテルが都内に乱立して供給過多となり客室が余ってしまうことになる」という懸念をこのように呼んでいました。実際私もその頃、赤坂のホテルに勤務しており2007年問題に対応しておりました。

しかしながら、フタを開けてみるとどうでしょう。世界レベルの多くのホテルが都内にオープンしたことにより付加価値が生まれ、結果的に海外から東京を訪れる観光客は増加し、稼働率が下がらないどころか室単価が上がるという現象が起こりました。

ではこの現象を地方都市にあてはめてみることにします。

世界レベルの高級ホテルは1泊5万~7万円が相場となるため、一般的なツーリストが利用するには高い値段設定となります。要するに、前述の歴史における、税金を使って高級宿泊施設をつくり格安で提供するという図式とは異なり、既存観光客が高級ホテルに流れる可能性は低く、新たなマーケットとして「富裕層」という新規顧客の創生に繋がるのではないでしょうか。

もしも地域に伝統的な旅館などがあり、その施設を「世界的レベルの高級旅館」に生まれ変わらせることが可能であれば、この政策において積極的に政費を投入するべきで、日本の文化を守るためには永山氏の言うように海外の高級ホテルの誘致よりもむしろ優先順位を上げるべきです。

新設された高級ホテルでコンベンションなどが開催されれば、要人はそのホテルに宿泊するかもしれませんが、予算や部屋数の問題などで多くの関係者は既存宿泊施設を利用することになります。また、海外からの要人の中には高級ホテルよりは高級旅館での日本文化の体験を望むといったケースも少なくないでしょう。

大きなコンベンションは、それだけで地域に大きな経済効果をもたらします。年に数回でも開催ができれば、その期間は地域の宿泊施設の稼働率や室単価は引き上げられ、訪れた人たちは食事、お土産、観光などで多くのお金を落としてくれます。

さらに富裕層の顧客が増えていけば、彼らをターゲットにハイエンドなレストランや有名ブランド店などの進出も考えられます。宿泊業以外の分野にも多様性が生まれ相乗効果で地域の活性化の後押しとなるでしょう。

新しいことを始めるにはリスクがあります。しかしながら、変わらないことにも大きなリスクがあることを認識しなくてはなりません。この政策を活かすも殺すも、地域の取り組み次第です。たしかに高級ホテルを作るだけでは海外からセレブに足を運んでもらうのは難しいでしょう。しかしながら、既存の観光資源に磨きをかけ、英語環境を整備して海外に向けて情報を発信し、訪日外国人が日本の文化や自然、食事や買い物などを日本人と同じように満喫できる環境を提供することができれば、見えてくる地域の未来も大きく変わってくるはずです。

現在の日本は、異常気象や震災などにより被災された地域の復興が急務となっています。そこにきて、高級ホテルの建築に税金を投入するということに対して批判がでるのは当然でしょう。しかしながら、復興を推し進めるにもお金が必要です。その財源が国内から集める税金だけでは足りないのであれば、海外から集めるより他ありません。

今の日本が世界に誇れる主な資源は「観光」です。

北海道はIR誘致を断念しましたが、地元の観光資源に磨きをかけて、この高級ホテル政策において北海道の各地域が積極的に誘致されることを期待しています。

リクール北海道代表 諸橋 篤

 

 

 

 

 

https://bit.ly/2YOcL4B