楽天トラベルがインバウンド観光客からの支持を急激に伸ばしている都道府県を発表しました。
集計方法はとてもシンプルで、2019年1月1日~12月31日までの楽天トラベル外国語サイト経由の予約人泊数をもとに、対前年比でどのくらい数字を伸ばしたのかを比較したランキングです。
ちなにみ「人泊数」とは「人数x泊数」という意味で、「2人で3泊」なら「2人x3泊」で人泊数は「6」となります。
まず、最初に順位からお伝えいたします。
1位 新潟県 +85.2%
2位 岐阜県 +72.2%
3位 山形県 +64.7%
4位 福島県 +56.2%
5位 群馬県 +52.1%
「思った通りの順位だね」という方は少数派のはずです。私がぱっと思い出せる訪日外国人に人気と思われる都道府県は、一つもランクインされていませんでした。
ランキングは5位までしか発表されていないため北海道が何位だったのかはわかりませんが、京都や東京なども含め、もともと人気の高い都道府県は実際の人泊数では高順位になるものの、伸び率での健闘は難しいのでしょう。
さて、対前年比85%増の新潟県ですが、楽天トラベルの分析を見てみると「冬のスキー需要が好調な「越後湯沢・苗場」エリアが+105.7%(約2.1倍)、「上越・糸魚川・妙高」エリアが+95.8%(約2.0倍)と大きく伸長しました」とのこと。
その他の地域もスキー(雪)・温泉・文化(白川郷など)を軸に外国人観光客の人気を伸ばしているようです。
文化的な側面が弱くはありますが、北海道にも上質な雪とすばらしい温泉がたくさんあります。
旭川市に関しては、一般社団法人 大雪カムイミンタラ DMOが「マウンテンシティリゾート」というコンセプトで旭川市街地を中心に1市7町に点在する個性的なスキー場を「テーマパーク」のように打ち出しています。
マウンテンシティリゾートには旭岳のスキーコースを含め、プロレベルのツワモノたちから初心者までが楽しめるバラエティに富んだコースが8か所、もちろんスキー場の近く(またはスキー場に隣接して)温泉も付いています。
道北地区のパウダースノーは世界的にも有名で、世界中からその雪質を求めて多くのスキーヤーが訪れます。
しかしながら、北海道がターゲットにするべきは果たして「雪質にうるさい上級スキーヤー」だけでしょうか?
実はわたくし東京生まれでスキーは一度もしたことがありません。理由はいくつかありますが、一番を挙げるとしたら「準備が面倒」だからです。
ですが「普段まったくスキーをする機会はないけどせっかく北海道に来たのだからちょっとくらい体験はしてみたい」という気持ちは常に持っています。
この「準備は面倒だけどちょっとだけ体験したいマーケット」、これが意外と無視できないのではないかと考えています。
例えば数年前から流行り始めたグランピング。
「キャンプはやってみたいけど、準備が面倒マーケット」をうまく取り込んだ好例です。豪華なテントは既に設置済で、バーベキューの食材や火起こしまでセットになっています。車で乗り付けてキャンプを楽しみ、後片付けも不要という上げ膳据え膳なシステム。当然費用は通常のキャンプよりは高額となり、本格的なキャンパーからは邪道とも言われています。
グランピングを利用する人たちは必ずしもキャンプ好きの人たちばかりではありません。でありながら、この疑似(?)キャンプ体験から本格的にキャンプにハマる人たちがいるのもまた事実。
スキーやウエアをレンタルで一式揃え、さらにレッスンも受けたいとなればグランピングのように費用は当然割高になるでしょう。しかし雪の少ない地域から訪れた人たちにとって最高の雪質を誇る北海道でスキーを体験できるのであれば、高いとは感じないはずです。なぜなら、その10倍の金額を払っても普段は絶対に体験できない特別なアトラクションなのですから。
スキー未経験者でも思い立った時に気軽に体験ができる仕組みを作ることができれば、スキー人口の増加につながり、マーケットの裾野が大きく広がるはずです。インバウンドマーケットだけではなく、日本人観光客でも私のように「スキーは未経験だけれど、一度はゲレンデに立ってみたい」と思っている人が少なからずいるでしょう。
“ビギナーにやさしい、世界一お手軽にスキーを満喫できるシティリゾート”
我ながらお粗末なコピーではありますが、国内外問わず「ちょっとだけスキーを体験したいマーケット」には刺さるかもしれません。
先日遠軽町にオープンした道内125か所目の道の駅「遠軽 森のオホーツク」はスキー場に隣接していて「手ぶらでもスキーが楽しめる」とのこと。価格はスキー・ウエア・リスト券・食事がセットになった一番高額の「レンタルフルパック」でもたったの10800円です。近くに温泉もありインバウンドの「ちょっとだけスキーを体験したいマーケット」にはピッタリなのですが、ホームページが日本語のみなのが残念。ぜひ、リクール北海道にお手伝いをさせていただきたい。
話が少し逸れましたが…。
「スキー未経験者に世界一やさしい」を道北の文化にまで昇華させることができれば奇抜なアイデアなどはなくとも、雪・温泉・文化の正攻法3点セットで、世界のステージでも十分に勝負できると、私は自信を持って言えます。
リクール北海道 諸橋 篤