新型コロナ対策のゴールを見える化する
北海道が、一度解除した緊急事態宣言を再発動。国も特定の都道府県のみに出していた緊急事態宣言を全国に拡大したにも関わらず、毎日感染者数は増え続けています。
そして、4月22日の新型コロナウイルス感染症対策に当たる政府の専門家会議の会見で、新型コロナウイルス感染症対策に当たる政府の専門家会議のメンバーで厚労省クラスター対策班に加わっている北大の西浦博教授が「現状の行動制限は数か月単位で解消を目指したい。一方、通常の生活に戻って感染者が再度増加に転じることがあれば、現在行っている行動制限を繰り返さざるを得ないことも想定している。すぐに日常が戻っていることはなく、この1年は、この状況と多かれ少なかれ付き合っていかなければいけないと考えている」という見解を発表しました。
「国民一人一人が、人との接触をこれまでの8割以上減らすることにより、感染者数を減らしてゆくことができる」という情報は各テレビ局で毎日放送されているのでご存じとは思いますが、これは西浦教授が以前から提唱されていたもので「1人の感染者が他人に病気を移す数の平均値が1より少なくなれば収束に向かう」という理論から計算された数値です。
簡単にご説明しますと、10人が感染しても、次の感染者を合計で9人以内に収める、そして次の感染者を8人以内に収めるということを繰り返すことにより感染者を「0」に近づけてゆくというもの。
極端な例ですが、感染した人が翌日中に新たに2人に感染させるということを繰り返した場合、一か月を待たずに感染者数は日本の全人口を上回ってしまいます。
これが「1以下」と「2」の違いなのです。
「接触8割減」の警告を早くから発信されていた西浦教授の会見には、長期化への強い危機感と説得力があったと同時に「接触8割削減」が思うように実施されていないことへの焦燥感が漂っていました。
確かに、「あなたの大切な人とあなたの命の為に、人と会う機会を8割減らしましょう」と何の強制力も持たない呼びかけをして「8割減」を達成することは難しいでしょう。
国民のモラルを信じて発動している自粛要請には限界があります。
これは日本人のモラルの低さを嘆いているのではありません。
お恥ずかしながら、私自身が「要請」ではいつ終わるかわからない行動自粛を継続する(自らを律する)のが既に困難になってきており、マスクや消毒などで十分に警戒はしながらも「自分は大丈夫だろう」という安易な考えでレストランで食事をしたり、買い物に出てしまっている状況を踏まえ、反省の念を込めての現実的な意見とお考えいただきたい。
中途半端な自粛は、問題が解決しない上ストレスだけが蓄積されていくという最悪な事態が長期化して、社会全体の気力と体力を奪っていきます。
前置きが長くなりましたが、新型コロナ対策自粛ムードの長期化を防ぎ、戦いのゴールを設定(見える化)する方法のお話へ。
ちなみにこの提案は、現在多くの方が様々な意見を発信しておられますが、それらの良い部分(と勝手に解釈したもの)と海外で実施されている施策、そして私の個人的な意見をまとめたものです。
結論から申し上げますと、自宅待機を「要請」ではなく「強制」にするというものです。
具体的な内容は次のようになります。
(1) 自宅待機期間は4週間
この期間は外出禁止。新型コロナウイルスの潜伏期間+予備の2週間。
体調不良や発熱などがあった場合は、自治体ごとに出張でPCR検査を実施。
この期間に感染者を正確に特定し、徹底した治療を実施。
新たな感染者が出た場合は、行動地域を割り出し、濃厚接触者を隔離して経過観察をする。
(2) 自宅待機期間の買い物は週2回 x 2時間
買物は週に2回 x 2時間。それぞれ指定された曜日、時間帯、および特定の地域のみ外出を許可。
指定時間や地域以外での買い物(外出)を禁止することで、外出する人の数を分散させて密をできるだけ回避する。
(3) 協力金の交付
上記の2項目に違反することなくご協力いただいたご家庭には政府から一定額の協力金を交付。
(4) 違反者への罰則(取り締まりの強化)
回数に応じて、例えば1回の違反で協力金は半額、2回の違反で協力金の対象外とするなど。さらに違反があれば、罰金及び禁固刑も辞さない強い強制力を持ったものが必要。
営業できる店舗の選定方法や、流通はどうするのか、通院が必要な患者の対応は、などの細かい調整が必要となりますが、概要はとてもシンプルです。罰金や禁固刑など少し悲しいご提案ですが、大切な命や経済活動の速やかな再開の為には必要な勇気となるでしょう。
とても厳しい内容に見えますが、これでも人との接触をゼロにすることはできません。個人的にはここまでやらないと「人と会う機会を8割以上減らす」ことは難しいと思っております。
ここまで行動制限と感染者の割り出しを徹底することができれば、経済への影響を最小限に抑え、医療崩壊を防ぎ、救える命が増え、税金の節約にも繋がり、最短で日常の生活を取り戻すことができると考えます。
4週間を長いと思われる方もおられるかもしれませんが、3月半ばに実施していれば、強制自粛はすでに終了しており、今頃日常生活が戻っていた地域があったかもしれません。長い人生において、4週間などほんの短いインターミッションに過ぎません。
また、先の見えない「自粛要請」と違い「自粛強制」は「4週間」という具体的なゴールが見えているので「みんなで、あそこまで頑張ろう」という、新型コロナウイルスとの戦いに対してのモチベーションや国民全員で取り組んでいるという強力な一体感に繋がります。
ニューヨーク州のクオモ州知事は感染を止めるために3月22日にロックダウン(都市封鎖)を発動。その約4週間後の4月19日には「感染のピークは越えた」というコメントを出しました。そして同時に、「抗体検査を実施して、発病しないまま治ってしまった人の数の割り出し」という、今回のコラムで提案した対応策の次のステージにまで進んでいます。
日本と比較してはるかに厳しい状況であったニューヨーク州が、日本よりも先に「感染のピークは越えた」との発表および次の対策を講じているのを見て、今の日本の対応が不十分であることを痛感しました。
病気になったら無理をせず、しっかり休養を取り、元気になったら働く。
早く休めば、早く元気になる。
こんな誰でも知っている基本的なことが、日常生活を取り戻すための切り札になるのではないでしょうか。
リクール北海道
諸橋 篤