「高級ホテル50カ所政策」の道標

先日、日本政府が「各地に世界レベルのホテルを50カ所程度、新設することをめざす」と発表したことを受け、観光経済新聞に日本旅館協会副会長の永山久徳氏のコラムが掲載されました。

内容は非常に興味深く、今後の地方観光を考えていく上で大変勉強になりました。

これまで国はかんぽの宿やグリーンピア、国民休暇村など税金を投入して贅沢な宿を格安で提供してきたことにより既存の宿泊施設が疲弊し、その多くが廃業に追い込まれたという歴史を振り返り、政府は過去の失敗を繰り返さないよう「世界レベルの高級ホテルを50ヶ所程度新設する」という政策を見直すべきという内容でした。

しかしながら、ビジネスホテル、ツーリストホテル、旅館、民泊しか存在しない地方都市に世界レベルの高級ホテルがオープンすると地域の宿泊施設は疲弊し、前回同様次々と閉館に追い込まれてしまうのでしょうか。

私は、少し違う見解を持っています。

世界レベルの高級ホテルの建設により地域に多様性が生まれ、むしろ大きなメリットに変化する可能性が高いと考えています。

以前、東京のホテル業界で「2007年問題」というものがありました。一般的には「団塊世代の技術者の多くがその技を継承できずに2007年に定年退職を迎えることにより発生する問題」という認識が強いですが、東京都内のホテル業界に関しては、2005年頃から「2007年までに外資系を含む高級ホテルが都内に乱立して供給過多となり客室が余ってしまうことになる」という懸念をこのように呼んでいました。実際私もその頃、赤坂のホテルに勤務しており2007年問題に対応しておりました。

しかしながら、フタを開けてみるとどうでしょう。世界レベルの多くのホテルが都内にオープンしたことにより付加価値が生まれ、結果的に海外から東京を訪れる観光客は増加し、稼働率が下がらないどころか室単価が上がるという現象が起こりました。

ではこの現象を地方都市にあてはめてみることにします。

世界レベルの高級ホテルは1泊5万~7万円が相場となるため、一般的なツーリストが利用するには高い値段設定となります。要するに、前述の歴史における、税金を使って高級宿泊施設をつくり格安で提供するという図式とは異なり、既存観光客が高級ホテルに流れる可能性は低く、新たなマーケットとして「富裕層」という新規顧客の創生に繋がるのではないでしょうか。

もしも地域に伝統的な旅館などがあり、その施設を「世界的レベルの高級旅館」に生まれ変わらせることが可能であれば、この政策において積極的に政費を投入するべきで、日本の文化を守るためには永山氏の言うように海外の高級ホテルの誘致よりもむしろ優先順位を上げるべきです。

新設された高級ホテルでコンベンションなどが開催されれば、要人はそのホテルに宿泊するかもしれませんが、予算や部屋数の問題などで多くの関係者は既存宿泊施設を利用することになります。また、海外からの要人の中には高級ホテルよりは高級旅館での日本文化の体験を望むといったケースも少なくないでしょう。

大きなコンベンションは、それだけで地域に大きな経済効果をもたらします。年に数回でも開催ができれば、その期間は地域の宿泊施設の稼働率や室単価は引き上げられ、訪れた人たちは食事、お土産、観光などで多くのお金を落としてくれます。

さらに富裕層の顧客が増えていけば、彼らをターゲットにハイエンドなレストランや有名ブランド店などの進出も考えられます。宿泊業以外の分野にも多様性が生まれ相乗効果で地域の活性化の後押しとなるでしょう。

新しいことを始めるにはリスクがあります。しかしながら、変わらないことにも大きなリスクがあることを認識しなくてはなりません。この政策を活かすも殺すも、地域の取り組み次第です。たしかに高級ホテルを作るだけでは海外からセレブに足を運んでもらうのは難しいでしょう。しかしながら、既存の観光資源に磨きをかけ、英語環境を整備して海外に向けて情報を発信し、訪日外国人が日本の文化や自然、食事や買い物などを日本人と同じように満喫できる環境を提供することができれば、見えてくる地域の未来も大きく変わってくるはずです。

現在の日本は、異常気象や震災などにより被災された地域の復興が急務となっています。そこにきて、高級ホテルの建築に税金を投入するということに対して批判がでるのは当然でしょう。しかしながら、復興を推し進めるにもお金が必要です。その財源が国内から集める税金だけでは足りないのであれば、海外から集めるより他ありません。

今の日本が世界に誇れる主な資源は「観光」です。

北海道はIR誘致を断念しましたが、地元の観光資源に磨きをかけて、この高級ホテル政策において北海道の各地域が積極的に誘致されることを期待しています。

リクール北海道代表 諸橋 篤

 

 

 

 

 

https://bit.ly/2YOcL4B

美味しいEXPO2:清里町 Pure Village

発売前のケーキを味わう贅沢など、そうそう出会える機会ではありません。三度のごはんに負けないほどのケーキ好き(=私です)をノックアウトした美味しいパウンドケーキは、清里町観光協会から来月誕生します。

その名も「ピュア・ヴィレッジ(Pure Village)」。アルコールを飛ばした清里町名物じゃがいも焼酎を使用したモイストなパウンドケーキは、プレーン、はちみつ、きなこ、カフェモカの4種類。EXPOの出展ブースで紹介されていたのはちみつときなこの2種類でした。

「はちみつ」は、ビジネスEXPO2日目も後半に入り疲れた体に程よいハニーの香りと甘さが嬉しいおしゃれなテイスト。一方「きなこ」は、女神の微笑が美しい観光協会の女性がご紹介くださったとおり「さっきお客様が『はちみつはコーヒーに、きなこは日本茶に合うね』と仰ってました」と話してくださったように、濃いお煎茶にも抹茶にも、またおほうじ茶と一緒に夕食後のお茶請けにもしたいやさしいお味。

清里町観光協会が誇る「安心して食べられる」ピュア・ヴィレッジは、どちらも心と体に、またティータイムにも安らぎをくれそうな上質なお菓子でした。

アメリカではクリスマスにいくつもの贈り物をしますが、きれいに包装されたお菓子も喜ばれます。ピュア・ヴィレッジのボックスは大き過ぎず小さ過ぎずちょうど良いサイズで、華やかなリボンで飾れば素敵なホリデイギフトになりそうです。

 

きよさと観光協会公式サイトはこちら

美味しいEXPO 1: 富良野 halu Caféさん

お味ひとつで作られた人たちや地元素材のやさしい世界が広がるー

そう思わせてくれる素敵なジャムに出会いました。

11月7、8日に札幌で行われたビジネスEXPOでは先端技術に留まらず、北海道の魅力を伝える豊かな食の世界にも多くの注目が集まりました。

最初に心を奪われたのは富良野の人気店、halu Café さんの種類豊富な自家製ジャムと美しいはちみつでした。中でもセンセーショナルだったのが「スパイシートマトジャム」。廃棄対象になってしまう青いミニトマトを使った、リッチなテイストにピリッとペッパーの香る、お料理に使いたいグリーントマトのジャムでした。

「ステーキにのせたりね」

美しいhalu Café さんのマダム、宮本 睦さんがこう話してくださいました。

クリスマスの肉料理は、スパイシートマトジャムに合うメニューと決めました。

このほか、

「今年のハニーはアカシアの周りに花が咲かなかったので雑味がないんですよ」

と仰ったアカシアハニーは、微かに若緑色の入った、ヴァージンオリーヴオイルのような色合いの美しく、そして後味の爽やかなとても美味しいはちみつです。

ジャムやはちみつの美味しさに何倍も何十倍もフレーバーを添えるマダムのお話は、それを聞いた私たちの食卓をより楽しくしてくださるものになりました。

温かい人たちの温かい手によってつくられたhalu Café さんのジャムとハニーはきっと、あなたのディナータイムをより豊かにしてくれるはずです。

 

TOKYO – SAPPORO 2020

2020年東京オリンピックのメインイベントとも言えるマラソンと競歩の開催地が、札幌に正式決定いたしました。

北海道民としましては、オリンピックを間近に観戦できる機会に恵まれたという点では嬉しい限りですが、東京都民や近郊にお住まいの方、また来夏に向けて既に宿泊施設の予約を済ませた方々の諦めきれないという心情は、もしもこれが逆の立場であったならと考えればそれはお察しするに余りあります。

マラソンや競歩は多くのオリンピック競技の中でも最も広い地域が関わるものです。40kmを超えるコースの整備や安全の確保、そして今回深刻な問題となっている暑さ対策など多くの課題が山積みとなっています。

それらをすべてクリアして「マラソンと競歩の開催地を札幌に移して本当に良かった」と大会後、関係者や沿道で応援するの人たちに心から喜んでもらえる大会にするには、IOCや東京都との連携は勿論ですが、秋元克広市長が記者会見で語っていたように私たち道民を含めた「オール北海道で」成功を目指す必要があるでしょう。

2019年のラグビーワールドカップ日本大会は、ニュースなどでもご存知のとおり、世界中から「ラグビーワールドカップ史上、最も素晴らしい大会だった」と称賛されています。これは、各国のキャンプ地の地域住民の心温かいおもてなしや、日本戦以外においても全スタジアムが満員になるなど、日本人全体が一つになって大会を盛り上げたことが大きな要因であることは間違いありません。選手たちの中には、日本の素晴らしいおもてなしの文化と優しい人達のとりこになって「また日本に帰ってきたい」という声が続出しているとのことです。

東京オリンピックのマラソン札幌開催は、大会まで1年を切っての変更という大変厳しい局面ではありますが、まさに札幌を、ひいては北海道を世界に強くアピールする千載一遇のチャンスであるとも言えます。

北海道民が一丸となってマラソン札幌開催を成功させるためのミッションをひとつ考えてみました。

42.195kmの沿道を人で埋め尽くす!いかがでしょうか。

「札幌のコースは単調でつまらない」とは言わせません。スタートからゴールまで、途切れることなく道産子で埋め尽くされた沿道は、まるで超満員のスタジアムを走っているような感覚になることでしょう。

その為には選手たちの安全の為に多くの警備やボランティアが必要になるのは否めませんし、応援する私たちは自ら暑さ対策を講じなければなりません。ですがオリンピックに関わることができる機会など人生においてそう多く出会えるものではありません。

積極的にボランティアにも参加して、ラグビーワールドカップのように「札幌開催は最高であった」との評価を得られるようしっかりと、また楽しく準備のお手伝いをし、道民のひとりとして札幌開催の成功に一役買いたいものです。

リクール北海道は東京オリンピックのマラソン札幌開催を応援いたします。

「ぬるま湯」という発想

現在日本各地では2020年東京オリンピック、また2025年大阪万博に向けてさらなる増大が見込まれる来日外国人観光客へのいわゆる「インバウンド対策」に追われています。

世界に認知されて久しい「おもてなし」。まさに日本の細やかな気遣いを示すに相応しい言葉ですが、実際に海外からのお客様は日本独特のおもてなしをどのように受け止めているのでしょう。

主体性に長けている海外の人たち、特に欧米人にとって、甲斐甲斐しくされることは必ずしも好意的に捉えられるものではないというのが残念ながら現実のようです。

例えば、日本文化を肌身で感じたいと日本旅館に宿泊したところ、館内履きの脱ぎ方からお箸の持ち方まで手取り足取り指南されてとても窮屈を感じたのだという話を実際に聞いたことがあります。勿論、スタッフの方たちはお客様がお箸を使いやすいよう、また日本の美しい所作をおもてなしとしてお手伝いしたわけですが、好奇心旺盛かつ日本の伝統や文化に馴染みのない人たちには「日本ではこのようにいたします」と説明が書かれた文字による案内の方が嬉しかったようです。

海外の人たちはさらに、知らない人から突然からだに触れられることに対して強い違和感を持つことがあります。

互いを知らない双方にはそれぞれの思いがあります。日本への憧れと期待を抱いて来日する側と日本の伝統文化を伝えたい側。そうした思いの温度は熱過ぎれば苦痛や疲労を生み、低過ぎれば無関心、冷たいという印象を与えてしまいます。

けれどもそうした観念を払拭することは決して難しくありません。両サイドにとって “the happiest” な「人肌」「ぬるま湯」状態をつくる最も適切で容易な、来日外国人観光客が求めた「説明」つまり言葉による伝達という手段があるからです。

海外の人たちは、私たち日本人が考えている以上に学ぶことが大好きで、活字を読むことを苦としません。それを証拠に、海外の旅行ガイドは日本のそれとは違い画像は殆どありません。そこに書かれた情報がどれ程のボリューム、また正確さかは別として、「英語の通じない日本」を訪れる前に言葉で困らないよう活字で情報を仕入れてやってきます。

これはオーストラリアの大手旅行ガイド “lonely planet” 日本編です。北海道を紹介した70ページの中に、地図以外の画像は1枚もありません。lonely planet に限らず、海外の旅行ガイドは「読ませて伝える」が常識。海外の人たちは目で見た景色の美しさや食材の新鮮さで旅を判断するのではなく、しっかりと詳細を知ることのできる、文字による案内を参考に旅をするのです。

こうした海外と日本の違いを見てみると、英語で書かれた説明によって得る情報、要するに事前に得られる「心構え」にスタッフの笑顔が加われば、バランスのとれたおもてなしが実現すると言えるのではないでしょうか。勿論この場合の「英語」は日本人目線でなくあくまでも「ネイティブ」仕様であることが条件です。

文字で伝える情報は、旅行者のみならずおもてなしする人たちにとってもハードルの高い英語力取得から解放されるという大きな利点であることは間違いありません。

外国人観光客が困ることのない北海道。これを実現すべく、各施設や名所、飲食店等の英語環境整備を急がねばなりません。リクール北海道は、「言葉に困らない北海道」と「外国人観光客に困らない北海道」づくりをスローガンに「ぬるま湯フィロソフィーの道内拡大」を掲げ、日々活動してまいります。